理論研究の方法(保育学、教科教育学を中心に更新中)
保育学における造形表現や、
教科教育学における図画工作、美術科教育学において
理論研究(仮説構築型・仮説検証型)は、いかに行うことが可能なのでしょうか?
この問題は、くりかえし議論や考察が行われておりますが、
決定的な解決方法は、まだ生み出されていないようです。
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研究における【内容】は、大別すると以下のようになると思われます。
また研究における【方法】では、学問領域によってさまざまですが、保育学や教科教育学においては、以下の方法がよく援用されます。
【研究の内容】
理論研究・・・仮説構築型 と 仮説検証型
(理論構築やモデル化をめざす)
実証研究・・・実態解明型 と 実態検証型
(ある事柄から知識の獲得をめざす)
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【研究の方法の一例】
質的研究・・・文章や文字などの質的データの分析から、ある出来事を解明しようとするもの。
量的研究・・・数値や数式を用いて計量的に現象をとらえ、説明しようとするもの。
歴史研究(文献研究)・・・過去の出来事に対し、時期で区分しながら歴史的事実に迫ろうとするもの。
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しかし保育学や美術科教育学など、学際的、領域横断的な学問においては、理論的な研究を、どのような方法や文体の様式で、記述していけば良いのかは、いまだ確立されておらず、論文を書き始めようと思う研究者には困難が予想されます。
そこで教科教育学における理論研究を調べたところ、近年、理論研究の方法論について検討した論文を複数発見しました。
今回は、その中で、私的に一番参考になった、社会科教育学のものを紹介します。
同じ学際的で領域横断的な教科である社会科教育学にも似たような問題があるようですが、以下の整理や理論研究の方法は美術科教育学にも援用できそうです。
本文のリンクを以下に掲載します。
また下記に私が要約したものを掲載します。
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社会科教育における理論研究の動向
川口広美 日本社会科教育学会 2015 巻 (2015) 125 号 p. 96-107
https://www.jstage.jst.go.jp/article/socialstudies/2015/125/2015_10/_pdf/-char/ja
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社会科教育における理論研究の動向の要約
【理論の変革・創造的研究】
1)関連学問の成果を活用して理論の変革・創造を行う研究(カリキュラムへの提案型?)
・現在の図画工作(保育学)の原理的・実践的課題を示し、(先行研究)
・それに対しての答えとして関連学問(美学・心理学など)の研究成果を援用して、美術科の授業を構想する前提としての理論を明確にしようとする研究。
(例)ディベート勝ち負け成否論争に対して、シャンタル・ムフのラディカル民主主義の理論を援用して、成否論に新たな視座(構想)をあたえる研究。
2)授業(保育)の創造を通した理論の変革・創造を行う研究(カリキュラムの開発型?)
・従来の実践に関する理論を批判的に吟味し、(先行研究)
・それに代わりうるより優れた理論を提示する。(仮説提示)
・さらにその理論を具体化した授業案を提示する(授業案・提示)
・具体的なカリキュラム例を示す。(授業カリキュラムの提案)
・実践の検証は、今後の課題へ。
(例)倫理の授業、今まで多様な価値を理解。しかし受動的モデル。
価値を生成する授業の仮説モデルを独自で構想。(能動的モデルの新たな提示)
3)授業の創造・実施・評価を通した理論の変革・創造を行う研究
・上記の内容が、実際に授業で実施・検証されていないため、理論の有効性が弱いとされてきた。そこで理論の創造で終わらずに、実施、検証まで行ったもの。
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【理論の分析(解釈・説明)的研究】
1)優れた理論に基づく授業実践から理論の抽出を行った研究
・たとえばアメリカの優れた理論をもった鑑賞教育の授業実践から理論を抽出するなど。
2)優れた授業実践の説明・解釈を通して理論を抽出する研究
・授業実践そのものに価値があるとし、授業実践の説明・解釈を目的におく研究。ただし個別の授業実践の説明にだけに留まらず、その説明から授業実践の課題を考える示唆を引き出すものとなっている。
(例)海外の優れたフィンランドの4年間をかけた社会に認識カリキュラムの授業や、イギリスのシチズンシップ育成の授業などの説明・解釈をとおした理論化など。グローバル化に対応したドイツの歴史カリキュラムと日本のものの検討。
3)理論の再解釈により新たな理論の抽出をおこなった研究
・これまでの先行研究で事実の確定や分析が行われたものを、今日の課題から見直し、再評価を図ろうとする研究。
4)多様な理論の整理から新たな理論を抽出する研究
・これまでの理論に関する先行研究網羅的に取り上げ、その理論を整理することで現段階までの到達点と残された課題を導きだす研究
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【理論の経験・実証的研究】
1)大規模な調査・分析によって理論を明らかにする研究。
一般的な状況や法則を見出すための量的調査・分析を行い、そこでの共通した傾向を明らかにしようとするもの。量的研究・定性的研究、アンケートなど
2)特定の人々の経験や文脈を理解・説明することで理論を作り上げる研究
・これからの実践を構想する上で有効な人物を選択し、その人物の経験・文脈によりそって理解・説明することで理論化を図ろうとする研究。・仮説発見型、質的研究、定性的研究
(例)意思決定型授業を受けた子どもに着目して参与観察し、つまづきや飛躍のポイントを引き出し、最終的に今後の指導方針を設定していったもの。
(例)震災にあった教師と子どものライフストーリー研究によって実態を明らかにし、社会的に意義のある評価方略を提示した。