現代美術の皮膚展
先日、大阪中ノ島の国立国際美術館に
「現代美術の皮膚展」を見に行ってきました。
現代美術の展示を主体とするこの美術館は、
完全な地下型美術館なので、案内図を頼りに
美術館へと近づいても、その姿はまったく見えません。
代わりに、川沿いにしつらえられた広大な広場と、
空へと突き刺さる竹林のようなステンレスパイプのモニュメントが
見えるのが特徴です。
こんな感じ
さて、現代美術の皮膚展では、以下のような作品が
展示されていました。(抜粋)
「自らの整形手術をパフォーマンスにするオルランや、
身体を昆虫でびっしりと覆うドレスを作るヤン・ファーブル、
遠く離れた恋人同士のスキンシップをテーマとする林智子など、
多くのアーティストたちが、「皮膚」へとアプローチする
様々な表現を行っています。
それらは、「皮膚」が持つ脆さや、世界との関係を通して、
人間存在の在り方を問うものでもあり、
かつまた、美術作品における「表面」の問題を
見つめ直す試みでもあります。
この展覧会では、ヨーロッパ、アジア、アメリカからの
11作家による1990年代以降の作品を紹介しながら、
現代美術がどのように「皮膚」と向きあってきたかを探っていきます」
とまあ、こんな感じだったのですが、
個人的にはキキ・スミスの作品が、いいな〜と思いました。
おぞましい身体や皮膚感覚を表現しているのですが、
そういったおぞましいものを通して、人の生に触れようとする
作者の切実な願望が見えて美しく感じました。
また、この日は、[現代美術の皮膚 講演会]「芸術の皮膚論の地平」
講師:谷川 渥(國學院大學教授)が開催されており、
これも今日、来た大きな目的のひとつでした。
谷川 渥さんの「美学の逆説」「鏡と皮膚」の本は図書館で2回ほど
借りたことがあるのですが、難しくて読破できませんでした。
「芸術をめぐる言葉1、2」は、両方読んだのですが、
どんなおっちゃんが、書いているのとても興味があり、足を運びました。
- 作者: 谷川渥
- 出版社/メーカー: 美術出版社
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イメージしていた谷川さんは、白髪メガネのこわそうなおじいさん
という感じだったのですが、行ってみるとダンディーな男前
ええ声のおじさんで、まず驚きました。
講演自体は、2時間の皮膚論だったのですが、本と同様かなりの
難解な話だったのですが、直接話を聞くというのは不思議なもので
よくわからない部分も、だいたいこの人はこんなことを言っているのだな
とわかってくるものなんですね〜。文章にするとわかりにくいものも
写真の絵のスライドとその人の話ことば、情熱などで、何を伝えたいのかと
いうことが、体を通して伝わってきます。
少しだけ、どんな内容だったのか、列記してみます。
「芸術の皮膚論の地平」
・西洋美学 絵画と鏡の関係を重視
・もひとつの視点 美術と皮膚の関係
1、筋肉、皮膚、着衣(シースル、ぬれ衣)
2、絵画は化粧術である
新古典主義(ボディコンシャス・ギリシャ彫刻)VSバロック(スキンコンシャス・ベルニーニ)
線派(フィレンツエ派・プッサン派)VS色派(ベネチア派・ルーベンス派)
ボードレール、色の優位性を描く。化粧礼賛。ドラクロアを持ち上げる。印象派へ
3、皮膚病理論医学の立場から(草間弥生)
4、版(14,5世紀の布普及、聖顔布、ベロニカ伝説)
5、、皮はぎ(アポロンとマルシュアス、バルトロメロの抜け殻、ミケランジェロの最後の審判)
補足:西欧=皮膚(毛皮) 東洋=肌
以上、こんな感じ内容だったんですが、やっぱり難しい〜
パーツパーツではわかりにくいんですが、
この講演や作品展の作品全体を通してみると、
西欧の皮膚感覚が、じんわーりと伝わってくるから不思議です。
今後、国立国際美術館は芸術の秋にちなんで
美術界で著名な方々のシンポジウムが目白押しです。
私は一応全部いこうかなと思っているのですが
興味のあるかたは足を運んでくださいね。
http://www.nmao.go.jp/japanese/kouenkai.html
10月20日(土) B1階講堂にて 午後2時から
館長と語る(第2回)
『国際展の現場』
〜第52回ベニス・ビエンナーレ、カッセル・ドクメンタ12他から〜
講師:建畠 晢(当館館長)
11月3日(土・祝)、4日(日) B1階講堂にて
[国立国際美術館開館30周年 記念シンポジウム]
「未完の過去 − この30年の美術」 3日 (土・祝) 午前10時20分〜午後4時30分 「アジア」「サブカルチャー」について
4日 (日) 午前10時25分〜午後4時45分 「ジェンダー」「国際展」「美術館」について