アート系トーク番組 art air の日記

アート・美術・幼児造形などについて

『サブカルチャーと美術』 国立国際美術館30周年記念シンポジウウム

大阪、中ノ島にある国立国際美術館
11/3に開催されたシンポジウム 
サブカルチャーと美術』に行ってきました。


当日は、午前に『アジアの美術』をテーマにしたシンポジウムが
あったのですが、仕事のため午後からの参加になりました。
途中高速道路で事故渋滞があり、駐車場からダッシュで館内に
すべりこみ、なんとか間に合いました。
この日は文化の日ということもあり、シンポジウム会場は満席でした。


どんな内容だったのか、私見もまじえて
簡単に書いてみたいと思い書きはじめたのですが、
内容のボリュームがありすぎて、
簡単には済まなさそうなので、何日かにわけて
ボチボチ書いていきますね(笑)


批評家の松井みどりさんの基調報告
サブカルチャーの活用と拡散
ポストモダン世代の思考モデルから日常の構成要素へ

を聞いて・・・


ポストモダンアートについて』欧米編


1939年
アメリカの抽象絵画を理論的に牽引した第一人者 
批評家のクレメント・グリーンバーグが「前衛とキッチュ(大衆芸術)」
というテキストのなかで、高尚芸術(ハイカルチャー)と大衆芸術(サブカルチャー)を差別化
絵画は概念的、理念的になっていった。(フォーマリズム・モダニズム
たとえば、バーネット・ニューマン

マーク・ロスコなど

同年
ドイツの思想家のヴァルターベンヤミンは「パッサージュ論」のなかで
キッチュといわれる大衆芸術的な流行のもののなかには、
人々と物との根源的で想像的な関係の痕跡が刻まれている
と述べており、本当に芸術が「革命」を目指し前衛的であるならば、
大衆が、それを表現する言葉も もたずに愛してきたものに蓄えた
夢のエネルギーを探り当てて解放すべきだ」
と提唱しました。


この考えは、1980年代以降、すなわちポストモダンの時代になって
受け入れられました。


すでにある表象のイメージの見せ方を変えたり
意味を変容さすことで、キッチュサブカルチャー)を
戦略的に活用する芸術が生まれました。
とくに80年代は写真を中心にアプロプリエーションな作品が
登場しました。


アプロプリエイション
「美術史や広告やテレビなど、すでに作品化されているものから
イメージを借用して作品を作ったり、あるいは他人の作品を
自分の作品として再写真化したり、描き直したりする行為をさしています。
消費社会にあふれる「幸福」のイメージを別の文脈に置くことで
その意味を変化させたり、あるいは、人間の身体や階級や美についての
価値観を媒体している表象の洗脳的な機能を暴きだしたりするための
批判的な方法」

たとえば、シンディー・シャーマン

バーバラ・クルーガー

森村泰昌など




1980年
美術批評家のクレイグ・オーウェンは「アレゴリー的衝動」のなかで、
ポストモダン芸術の特徴を「アプロプリエーション、サイトスペシックな性格、
はかなさ、いりいろなものの集積、言説性、異種混合
」と定義し、
モダニズムのアートと区別しました。またオーウェンスは
「こうした特徴はアレゴリーとの関係性において
1つのまとまった傾向を形成するともいえる。
つまりこれらの芸術はひとつの一貫した衝動によって
つき動かされているのだと考えることができる。
そして、その衝動は、アレゴリーのことをいつまでも美学的あやまちと
考えるような批評には説明できないものなのである」と言っています。


アレゴリー
アレゴリーは文学用語であるが、オーウェンスはそれを、
ある別のテキストを通して読まれる、新たな意味を持つ
テキストと定義し、その「たとえ断片的で不完全であり、
何か別のものを通してある1つの意味を読み取る作用」は、
アートにも応用できると考えた。


1983年
ハル・ホスターは「制度を転覆させる記号」の中で
「モダン以降のアートは芸術のモダニズム的あるいは伝統的な
作法を貫くことではない。
様式を洗練させたり、新たな形態を発明したり、
美的崇高性をねらったり、芸術の存在理由について瞑想することを
望んでいるのでは全くないのだ。


このアートは、デュシャンのレディーメイドを手本とする発表の
方法に基づいた芸術制度の批判と志を1つにしているが、
ミニマリズムという先駆者たちのようにオブジェの認識に
関する探究やそれに対する主観的な反応の現象学的な意味を
追求しようとしているのでもない。


これらのアートの仕事は、芸術を括弧にいれることはせずに、
形態的、あるいは知覚的な実験を行う。
文化産業であれなんであれ他の分野の実践と共同戦前をはろうとする」
と述べています。
つまりモダン以降のアートは、大衆的な中のイメージの常套句(クリシェ)を
引用して、脱領域、異化していく表象分析的なアートといえそうです。


今までの話を要約すると、
モダンアートが視覚的、物質的なものに、こだわったのに対して、
ポストモダンアートは、人間と社会との関係を考えるうえで
触媒として機能するアートのことを指すと言えそうです。


ここままで、だいたいのポストモダンアートの定義が
できてきたわけですが、30分という短い基調報告のなかで
すでに、時間はオシオシでした(**)


日本のポストモダンアートとサブカルチャーとの関係を
話すのが、メインのお題だったのですが、
時間のない中、果たしてどうなるのか!?


つづきは、また次回に・・・




モダニズムアートが終わった後のアートに興味を持った方は、ぜひ、おすすめな1冊です。
シンポジウムでは語りつくせなかった内容が
こちら本にのっていますので、おすすめです。