現代アート絵画についての考察、国立国際美術館新築移転5周年記念シンポジウム「絵画の時代ーゼロ年代の地平から」を聞いて
国立国際美術館新築移転5周年記念シンポジウム
「絵画の時代ーゼロ年代の地平から」に行ってきました。
シンポジウムは1/23(土)、24(日)の2日間行われました。
美術館学芸員、キュレーター、批評家、美学者などの
アートの専門化が絵画について語りつくすという贅沢な内容です。
しかし皆さん専門の領域が違うため、いろいろな立場・視点から
話がなされていたために、聴衆にはかなりわかりづらい、
聞きづらいシンポジウムになってしまったのは少し残念でした。
私も帰ってきた直後は、かなり頭の中が
こんがらがっていましたが、一晩寝て
少し整理ができたので、今のうちにブログに
まとめておきたいと思います。
現代アート絵画を制作・鑑賞する3つの視点
●モダニズムの視点
絵画の自立性。強度、造形性、崇高性。
・・・・写真の発明以降、絵画は写実的な再現性から解放される。
その代わり、点、線、面、色、素材などの純粋な造形要素で
絵画の強度、完成度を成立させる自立性のある作品が作られた。
●ポストモダニズムの視点
現象としての絵。思想や批評を示すための平面。
・・・・感じた世界の現象を定着させるための絵。
または世界を認識、知覚するための手段、方法として平面。
思想や批評をイメージを利用して表象する絵。
絵画作品としての自立した完成度や強度は求められない。
絵の中にあらわれる様々なモチーフや現象をとおして、
ある感覚、思想、批評などを類推させる。
また複数の絵を空間に構成することで、空間にある現象を
引き起こさせるなど、複数の作品の連携性、連続性にも特徴がある。
●ポストコロニアリズム(脱植民地主義という名の植民地主義)の視点
欧米の文化がいかに他国に影響を及ぼしたか
逆に 欧米の文化にいかに他国が影響を及ぼしたかという視点の重要性
・・・・現代アートが社会的、経済的に影響力をもって展開しているのは
アメリカのニューヨークと欧米の一部の地域に限定されるため
欧米の視点に立ったとき、どのように作品が鑑賞されるのか
ということを吟味する必要がある。
以上、3つの視点にたって絵を鑑賞すると
ずいぶん見通しがよくなるように感じました。
「絵画の庭」点では、もちろんポストモダニズムの視点
ポストコロニアリズム(脱植民地主義という名の植民地主義)の視点
のふたつの視点をもった作品が主流を占めています。
しかし、中には中途半端な自己言及性にもとづいた作品や
モダニズムのように作品を完成させようとしているのか
どうなのかという中途半端な視点の作品も散見され
シンポジウムのモダニストたちからは
辛口コメントをされておりました。
シンポジウムの詳細は以下のような内容でした。
近日中にシンポジウムの内容は書籍化されるそうなので
興味のある方は、そちらもご参照ください。
国立国際美術館新築移転5周年記念シンポジウム「絵画の時代ーゼロ年代の地平から」
1月23日(土)
13:20-13:30 はじめに 島敦彦(当館学芸課長)
進行 岡村知子(コーディネーター)
□セッション1 「絵画の継承 / 断絶」
13:30-13:50 基調報告 「アナクロニックであるとは何か『モダニズムの絵画』再考」松浦寿夫(東京外国語大学総合国際学研究院教授)
14:00-15:00 討議 パネリスト
尾信一郎(鳥取県立博物館副館長)、林道郎(上智大学国際教養学部教授)、松浦寿夫
□セッション2 「ポスト近代の絵画と具象表現」 15:15-15:35 基調報告 「フレームを超えて混沌の時代を生きるための極小の方法」松井みどり(美術評論家)
15:45-16:45 討議 パネリスト
天野一夫(豊田市美術館チーフキュレーター)、金井直(信州大学人文学部准教授)、松井みどり
1月24日(日) 10:25-10:30 進行 島敦彦
□セッション3 「絵画のオルタナティヴ」 10:30-10:50 基調報告 「モードとしてのドローイング」保坂健二朗(東京国立近代美術館企画課研究員)
11:00-12:00 討議 パネリスト
池上裕子(大阪大学大学院人間科学研究科グローバルCOE特任助教)、神谷幸江(広島市現代美術館学芸担当課長)、保坂健二朗
13:15-14:45 総合討議「絵画の時代を語り尽くす」 パネリスト
斎藤環(精神科医/爽風会佐々木病院精神科診療部長)、建畠晢(当館館長)、谷川渥(國學院大學文学部教授)